診療案内
Medical information睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中にたびたび呼吸が止まる病気です。無呼吸によって酸素が十分に行きわたらなくなるため、心不全、不整脈、狭心症・心筋梗塞、脳卒中の発症リスクが高まります。SASがある方は、心筋梗梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気を合併するリスクが2~4倍にまで高まります。さらに喘息の方はSASの合併率が高く(20~40%程度)、SASによる夜間の低酸素血症・高二酸化炭素血症は、気道の炎症・過敏性を悪化させ、喘息に悪影響を及ぼします。また、睡眠が妨げられることから、日中に耐えがたい眠気を感じることも多くなります。また交通事故リスクが約7倍高いとされており、運転を長時間される方や、集中力を必要とする作業などをされる方は、事故につながってしまう可能性もあり、特に注意が必要です。ご自身では睡眠中の無呼吸になかなか気づけないこともあり、発見・治療は遅れがちです。現在、国内では潜在患者を含めると300~400万人の方が睡眠時無呼吸症候群にあたると推定されていますが、そのうち治療を受けているのは1~2割程度に留まっています。
無呼吸やいびきを指摘されたとき、起床直後や日中に睡眠が不足しているような症状がある場合には、お早目にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群の症状は、睡眠中、起床時、日中の3つの時間帯に分けられます。
睡眠中の症状
- いびきをかく
- いびきが止まったときに無呼吸になっている、その後大きな呼吸とともにいびきを再開する
- 頻繁に無呼吸になっている
- 呼吸音が乱れる、息苦しい
- 夜中に何度も目が覚める
- よく寝汗をかく
- 夜間の頻尿
※睡眠中の症状については、ご自身では気づけないことがあるため、ご家族などに無呼吸やいびきの有無を尋ねてみてください。
起床時の症状
- 口、のどが渇いている
- 頭痛がする
- 十分に寝たはずなのに熟睡感がない
- 寝起きが悪い、ベッドからすぐ起きられない
- 身体が重い感じがする、身体がだるい
※睡眠の質が悪くなるせいで、十分に疲れが取れないため、上記のような症状が見られます。
日中の症状
- 耐えがたい眠気に襲われる
- 集中力、注意力の低下
- 十分休んでいるはずなのに疲れを感じる
- 気分の変動、抑うつ傾向
- 高血圧のコントロールが悪い
※日中の症状によって、仕事・学業に支障が出ます。特に運転中の居眠りは、ご自身や他の人の命を危険にさらすことになります。会議中、面接中、試験中など、本来であれば居眠りなど考えられない場面で眠気を感じる方は要注意です。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい方
以下のような方は、睡眠時無呼吸症候群になりやすい傾向があります。
- 肥満傾向にある方(BMI 25以上、特に30以上)
- 首回りの脂肪が多い方
- 首が短い方
- 顎が小さい方
- 舌が大きい方
- 扁桃・アデノイド肥大の方
- アルコール摂取・睡眠薬の使用
睡眠時無呼吸症候群の分類と原因
睡眠時無呼吸症候群は、以下の3つのタイプに分類され、それぞれ原因が異なります。
1. 閉塞型睡眠時無呼吸症候群
物理的に気道が狭くなる・塞がれることで無呼吸が生じるタイプです。睡眠時無呼吸症候群全体のうち、90%以上をこの閉塞型睡眠時無呼吸症候群が占めます。最大の原因となるのが肥満です。脂肪の厚みによって、気道が狭くなります。その他、扁桃・アデノイド肥大、下顎の小ささ、舌が大きい、口蓋垂(のどちんこ)が大きいといったことも閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因となります。口呼吸の方の場合やアルコールや睡眠薬を飲んだ場合、特に舌が喉に落ちやすくなります(舌根沈下)。
2. 中枢型睡眠時無呼吸症候群
喉が塞がれることはないものの、ストレスなどを原因として脳中枢が呼吸を正しくコントロールできずに無呼吸になるタイプです。脳卒中、心不全などを原因として、呼吸そのものの機能が低下する・停止することで発症することもあります。
3. 混合型睡眠時無呼吸症候群
閉塞型と中枢型の両方の要素が重なって起こるタイプです。
睡眠時無呼吸症候群の診断・検査
10秒以上の無呼吸が一晩(7時間睡眠)のうちに30回以上、または1時間に5回以上認められる場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。その重症度は、以下の表のように1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)によって分類されます。
重症度 | 無呼吸・低呼吸の回数(AHI) |
---|---|
軽症 | 5回~15回/1時間 |
中等症 | 15回~30回/1時間 |
重症 | 30回~/1時間 |
最重症 | 40回~/1時間 |
日中の眠気を判定するテスト
日中の眠気を判定するテストも有効です。以下の質問の合計スコアが5点未満の方は安心ですが、それ以上の方は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。特に11点以上の方は、睡眠時無呼吸症候群が強く疑われます。
状況 | 決して 眠くならない | ときどき居眠りを してしまう | よく居眠りを してしまう | だいたいいつも 居眠りをしてしまう |
---|---|---|---|---|
座って読書している時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
テレビを見ている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
公の場所で座って何もしない時(劇場や会議等) | 0 | 1 | 2 | 3 |
1時間続けて車に乗せてもらっている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
状況が許せば、午後横になって休息する時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
座って誰かと話をしている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
昼食後(お酒を飲まずに)静かに座っている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
自分が運転をしており、渋滞で2~3分止まっている時 | 0 | 1 | 2 | 3 |
簡易検査(簡易睡眠ポリソムノグラフィー検査:簡易PSG検査)
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には「簡易PSG検査」を行い診断します。この検査は、ご自宅で睡眠中に実施できる検査で入院の必要はありません。検査には当クリニックからお貸し出しする携帯用の検査装置を使用します。ご自宅で装置を一晩装着してお休みいただくだけで検査が完了します。鼻、胸、腹、指先にセンサー等を取り付け、鼻呼吸の状態、いびきの有無、胸・腹の動き、血中の酸素濃度、脈拍数、体位などを測定し、睡眠時無呼吸症候群の重症度まで調べることができます。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には「簡易検査」を行い診断します。ご自宅で睡眠時に行うことができる検査です。装置をレンタルし(医療機関が手配)、ご自宅で2日間装置をつけて寝るだけの検査です。鼻、胸、腹、指先にセンサー等を取り付け、鼻呼吸の状態、いびきの有無、胸・腹の動き、血中の酸素濃度、脈拍数、体位などを測定し、睡眠時無呼吸症候群の重症度まで調べることができます。
鼻腔通気度検査
鼻の空気の通りやすさを調べる検査です。鼻詰まりが睡眠中の無呼吸の原因となっている場合があるため、必要に応じて行います。
精密検査(終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査: PSG検査)
簡易PSG検査での診断が難しい場合に行われます。病院に入院した上で、身体にセンサーを取り付けた状態で眠っていただきます。その間、センサーによって睡眠の深さ、分断の回数や長さを測定し、評価します。終夜睡眠PSGポリソムノグラフィー (PSG検査)が必要となった場合、ご希望される場合には提携する病院を紹介することがあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の見直しなどご自身でできることもありますが、急激に改善する病気ではありません。必ず医師の診断を受け、適切な治療を受けるようにしてください。
1. 生活習慣の見直し
特に肥満を原因として睡眠時無呼吸を起こしている場合には、食事療法・運動療法によるダイエットが有効です。バランスの良い食事と適度な運動による減量、禁煙などが有効です。喫煙は気道粘膜の炎症・腫れの原因となります。また、寝る前の飲酒は控えましょう。適量の飲酒によって寝つきがよくなることがありますが、夜中の覚醒の原因にもなるため、結果的に睡眠の質は低下します。加えて、酔うことで舌が喉に落ち込みやすくなります。
2. CPAP療法(シーパップ療法)
簡易検査や精密検査(PSG検査)の結果で、中等症以上(AHI: 30~40以上)の方が対象となります。現在、重症と診断された閉塞型睡眠時無呼吸症候群の方における最も効果的な治療として、主流になっています。装着したマスクから持続的に空気を送り込む装置を使い、気道を確保することで無呼吸状態を防ぐ治療です。無呼吸・いびきを改善する方法として、即効性が期待できます。近年では装置の小型化が進んでおり、旅行・出張などの際にも楽に持ち運びができます。ただし、根本的な原因を解決できるわけではありませんので、並行して減量などにも取り組んでいくことが大切になります。
- 保険適用です。装置は医療機関が手配いたします。
3. マウスピース
簡易PSG検査やポリソムノグラフィー (PSG検査)の結果で、軽症(AHI: 5~15)の方が対象となります。睡眠時にマウスピースを口腔内に装着し、顎を強制的に前方へと移動させるよう設計されたマウスピースを装着します。目的とする効果からも分かる通り、市販のマウスピースでは代用できません。歯科医院で、型取りをした上でオリジナルの形状のものを作製する必要があります。
- マウスピースによる治療が必要と判断したときには、提携する歯科医院を紹介することがあります。
- 保険適用と自費診療のものが選べます。
4. 手術
扁桃肥大、アデノイド肥大による睡眠時無呼吸症候群の場合には、扁桃やアデノイドを切除する手術が有効なことがあります。その他、両顎の骨を切る手術(上下顎同時前進術)が行われることもあります。
- 手術が必要になった場合には、提携する医療機関を速やかに紹介することがあります。
検査・治療の流れ
当院では、患者様が安心して治療を受けられるよう、以下の流れで診療を進めてまいります。
- 問診: 就寝中や日中の気になる症状、仕事・日常生活における支障などをお伺いします。
- 簡易PSG検査: ご自宅にて、簡易PSG検査を実施します。
- 精密検査(PSG検査): 提携する病院に1泊入院して頂き、ポリソムノグラフィー (PSG検査)を実施します。結果説明は医療機関で行われます。
- 治療開始: 生活習慣の改善指導を行った上で、CPAP療法、マウスピースによる治療を開始します。手術が必要な場合は、提携する病院を紹介します。
- タイトレーション検査: 治療効果が不十分な場合など、CPAP療法により気道に送る適切な空気の圧を決定するため、必要に応じて提携病院に1泊入院して頂き実施します。結果説明は医療機関で行われます。
- 定期的な通院: 保険診療での治療を行うためには、1ヵ月に1回以上の通院が必要になります。
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