診療案内
Medical information禁煙外来
タバコをやめようと思っていても、仕事の付き合いや長年の習慣で、ついつい吸い続けてしまうという方も多いのではないでしょうか。
しかし、喫煙を続けることは、がん全般や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった重篤な病気を引き起こす原因となります。当院では、禁煙を考えている方が一歩踏み出せるよう、喫煙の害、禁煙外来の具体的な流れ、禁煙後の効果について分かりやすくご説明し、皆様の健康をサポートします。
タバコの害に関して
タバコが体に与える影響は多岐にわたりますが、中でも最も大きな障害は呼吸器系に現れます。気管支や肺を傷つけることで、以下のような症状がゆっくりと進行していきます。
- 咳
- 痰
- 息切れ
これらの症状が怖いのは、一度肺気腫まで進行してしまうと、禁煙しても元に戻らない点です。当院の院長は呼吸器外科医として、肺がんをはじめとする悪性腫瘍や気胸など、さまざまな呼吸器疾患の治療に携わってまいりました。その経験から、呼吸器内科として早期に禁煙外来を勧めるのは、このような背景があるからです。
さらに、タバコは肺だけでなく、全身に悪影響を及ぼします。
- 血管の動脈硬化
- 骨密度の低下や筋力の衰え
- 胃腸系への影響
20代、30代のうちは若さでカバーできるかもしれませんが、年齢を重ねるにつれて、これらのダメージが一気に表面化する可能性があります。
「タバコが体に悪いのは分かっているけれど、なかなかやめられない…」そう感じるのは、タバコに含まれるニコチンによる精神的・身体的依存が原因です。タバコをやめようとすると、イライラしたり、眠気を感じたりといった精神的な症状、胃のむかつきや頭痛といった身体的な症状(離脱症状)が現れることがあります。世界保健機関(WHO)も、このニコチン依存はアヘンや大麻などの中毒と同等に非常に強力なものであると示しているほどです。このようにタバコは、全身に症状を与えるだけでなく、やめようとしても離脱症状が出現するため、前後ともに害をなす恐ろしいものなのです。
禁煙外来が受けられる条件について
当院の禁煙外来では、まずニコチン依存の重症度を問診票で確認させていただきます。
具体的には、以下の項目についてお伺いします。
- 自分が吸うつもりより、ずっと多くタバコを吸ってしまう事がある
- 禁煙やタバコの本数を減らそうと試みて、できなかった事がある
- 禁煙したりタバコの本数を減らそうとした時、吸いたくてたまらなくなる事がある
- 禁煙したり、本数を減らしたときに以下の症状が出た事がある
(イライラ、眠気、神経質、胃のむかつき、落ち着きがない、脈が遅い、集中しにくい、手の震え、憂鬱、頭痛、食欲や体重の増加) - 上記の症状を解消するためにタバコを吸い始めた事がある
- 重い病気にかかった時、タバコは害があると分かっていても吸ってしまう事がある
- タバコのために自分の身体に健康問題が起こっていても吸ってしまう事がある
- タバコのために精神的問題※が起こっていても吸ってしまう事がある
(※精神的問題とは、喫煙によって神経質になったり、不安や抑うつなどの症状が出現している状態) - 自分はタバコに依存していると感じる事がある
- タバコが吸えないような仕事や付き合いを避ける事が何度かある
これらのニコチン依存症チェックで合計点が5点以上の場合、ニコチン依存症と診断されます。この点数が5点以上で、かつ以下の条件を満たしている場合に、保険診療での禁煙治療が可能です。
- 直ちに禁煙を始めたいと思っている
- 1日の平均喫煙本数 × これまでの喫煙年数 = 200以上(※35歳以上の年齢制限は撤廃されました)
- 禁煙治療を受けることに文書で同意がある
禁煙外来の条件は年次によって変更される場合もありますので、ご自身が条件に当てはまるか微妙だと感じる方は、まずはお気軽に当院までお電話でご相談ください。
禁煙外来で使用するお薬は、ニコチン依存症の症状を抑える「禁煙補助薬」です。あくまで「補助」であるため、禁煙成功にはご自身の強い意志が最も重要になります。
「職場で補助が出るから仕方なく来た」「妻に連れられていやいや来た」「友達が禁煙補助薬を飲めば簡単にやめられると言っていた」といった軽い気持ちで来院されると、残念ながら禁煙に失敗するケースが多いのが現状です。
そのため、当院ではオリジナルのプログラムを組み、まずはご自身の肺の状態を確認することから始めます。
当院の禁煙外来初診時の検査の流れ
当院では、以下の3つの検査を検討します。
- 胸部レントゲン検査
- 一酸化炭素の呼気量
- 呼吸機能検査
まず、胸部レントゲン検査では、タバコが肺を傷つけることで見られる特徴として、肺の過膨張(タバコで肺が穴だらけになり膨らむ)や横隔膜の平定化(膨らんだ肺が横隔膜を圧迫する)などが見られることがあります。また、肺がんや間質性肺炎といった命に関わる病気が見つかることも少なくありません。これらは喫煙によってリスクが高まるため、禁煙外来に真剣に向き合うためにも確認しておくことが重要です。
次に、一酸化炭素の呼気量検査では、タバコの有害物質がどれくらい呼気中に含まれているかを測定します。誤差はありますが、一般的には以下の数値を目安とします。
数値 | 判定 |
---|---|
10以下 | 正常 |
10-20 | ライトユーザー |
30-40 | 一般的な喫煙者 |
40以上 | ヘビーユーザー |
ヘビーユーザーの場合、ニコチン依存度が強く、禁煙がより大変になるかもしれません。禁煙を続けることで、この数値がどのように変化していくかを比較し、モチベーション維持に繋げていきましょう。
そして、肺の見た目以上に分かりやすいのが肺の機能です。そのため、呼吸機能検査で「1秒量」と「肺活量」の2点を確認させていただきます。特に重要なのは、1秒間にどれくらい息を吐けるかを測定する「1秒量」です。タバコを吸うと、まず気管支が障害されるため、気管支の障害が最も分かりやすく現れます。具体的には、タバコによって気管支が傷つき狭くなるのです。その傷つき具合を見るのが1秒量です。人によっては、禁煙外来をきっかけに肺気腫が見つかることも少なくありません。
また、「1秒量」という聞き慣れない数値だとイメージが湧きにくいと思いますので、当院では「肺年齢」をお示しします。肺年齢は、肺がどれくらい傷ついたかを非常に分かりやすくイメージできる数値です。実年齢よりも肺年齢が上回っていることにショックを受ける方もいらっしゃいますが、タバコを吸い続けることで、ただでさえ傷ついた肺がさらにダメージを受け、実年齢との差が広がっていくことを理解し、禁煙へのモチベーションに繋げていただければ幸いです。
禁煙外来のお薬について
禁煙外来では、禁煙をサポートするためのお薬を使用することがあります。患者様の状態やご希望に合わせて、適切なお薬の選択肢についてご説明いたします。
禁煙外来のスケジュール・価格について
禁煙外来は、初診を含めて全12週間、計5回のプログラムとなっています。
重要なのは、プログラムの延長が国の方で認められていない点です。そのため、3か月以内に禁煙を完遂することが重要になります。また、タイムスケジュールも国の方で厳重に管理されており、例えば2回目の2週間後に来院できないから3週間後にずらすといったことはできません。この場合は、1週間後に受診するなど、早めていただくことになります。
禁煙外来は、5回継続することで意味を成す治療です。製薬会社のデータでも、最後まで来院することで禁煙成功率が上がることが示されています。
「禁煙できてないから病院に行くのが気まずい」「もう禁煙できたし行く意味ないだろう」「忙しくて病院に行く時間がない」など、様々なご事情があるかと思います。しかし、禁煙外来は一度保険診療で始めると、1年間は再度保険診療で始めることができません。
当院は土日も診療を行っており、東川口駅から徒歩5分圏内とアクセス便利な立地にあるため、いつでも受診しやすい環境を整えております。また、禁煙できていないからといって、患者様を叱責するようなことは決してありません。
どんな時に吸ってしまうか、回数は減っているか、吸いたい気持ちはどうかなど、お一人おひとりの状況を丁寧に確認しながら、一緒に禁煙という目標に向かって頑張っていければと思います。禁煙に成功された方には、5回目の診察時に再度呼吸機能検査を行い、肺年齢がどのように変化したかを確認することも可能です。5回まで通ってこそ、一つの禁煙プログラムとして完結しますので、途中離脱しないよう、一緒に頑張っていきましょう。
価格については、3割負担の方で、トータル5回分で1万2千円から2万円程度になります。初診の際には、初診料や検査代など少し費用がかかりますが、毎回同様の価格ではないのでご安心ください。また、職場によっては禁煙支援として補助金が出るところもありますので、ぜひご確認ください。
まとめ
タバコは非常に強い依存性を示す嗜好品であり、ニコチン依存は、大麻やアヘンと同程度の強い依存性を持つと言われています。そのため、ニコチン依存を断ち切ることは非常に大変な作業だと考えます。
禁煙中も、家族や飲み仲間、職場の同僚など、様々な誘惑があるでしょう。喫煙している人を見ると吸いたくなったり、飲み会の席でつい吸ってしまったりという事例も少なくありません。このように強い依存性を示し、これまでの喫煙環境を変えられない中で禁煙することは非常に困難です。しかし、だからこそ強い意志を持って立ち向かうことが大切です。一時的な減煙や禁煙では、残念ながら全く意味を成しません。
東川口けやき通り内科・呼吸器内科クリニックは、「呼吸に、暮らしに、やさしさを」という想いのもと、皆様の健康をサポートする「健康の木」として、地域に根差した医療を提供してまいります。当院では、オリジナルのプログラムを作成し、禁煙を頑張ろうとしている皆様の後押しを全力でいたします。このページを最後までお読みいただいた方は、きっと禁煙をしようという強い意志をお持ちだと思いますので、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。院長をはじめ、スタッフ一同、皆さまの健康な未来のために尽力いたします。