症状・疾患について

Symptoms / Diseases

むくみ(浮腫)について

むくみとは身体に余分な水分が溜まった状態を指します。特に顔や足はむくみを自覚しやすい部位です。皮膚を指で押した跡が長時間残る場合や、急激な体重増加がある場合はむくみが進行している可能性があります。むくみはその背後に深刻な病気が隠れているサインであることも少なくありません。

むくみ(浮腫)の症状について

むくみと一口に言っても、その原因や現れ方は様々です。

  • 顔や足のむくみ: 身体に水分が過剰に蓄積することで生じます。足や顔はむくみを自覚しやすい部位です。
  • 皮膚の圧痕: 指で皮膚を押した際にその跡が長時間残る場合は、むくみがかなり進行している状態です。
  • 急な体重増加: 短期間での急激な体重増加は重度のむくみが原因である可能性があり、注意が必要です。

むくみの主な原因は血中の水分量の過剰や血流の停滞です。塩分や水分の過剰摂取、デスクワークなどで長時間座りっぱなしの状態、運動不足なども原因となることがあります。健康のために水分を多く摂ることは大切ですがむくみが生じる場合は適量を超えている可能性があります。

またむくみは以下のような様々な疾患の症状として現れることがあります。

  • 心臓機能低下: 心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなることで、腎臓への血流量が減少し、体内に水分が溜まります。特に足にむくみが生じやすく、進行すると肺に水が溜まり、呼吸困難や息切れを引き起こすこともあります。
  • 腎臓機能低下: 腎臓は血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として排出する役割を担っています。腎臓の機能が低下すると、ナトリウムや水分の排出がうまくいかず、むくみが生じます。
  • 肝機能低下: 肝臓は有害物質の分解やタンパク質の生成など、多くの重要な働きをしています。肝機能が低下すると、これらの機能が損なわれ、むくみが起こることがあります。特に、肝臓で作られるアルブミンというタンパク質が減少すると、血管内の水分が血管外に漏れ出し、むくみが生じます。
  • 甲状腺機能低下: 甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、全身の活動性が著しく低下し、むくみが生じます。冷え、急な体重増加、倦怠感、疲労感、便秘などの症状も現れることがあります。老年期障害やうつ病と間違われることもあるため、正確な診断が必要です。
  • 急性肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群): 長時間同じ姿勢でいることで足に血栓ができ、それが肺に移動して肺の血管を詰まらせる病気です。足のむくみ、胸痛、息切れ、呼吸困難などの症状が現れ、命に関わることもあります。
  • 下肢静脈瘤: ふくらはぎのポンプ機能が弱まり、足の静脈に血液が滞留することで、静脈がこぶのように膨らんだり、足がむくんだりする病気です。命に関わることは稀ですが、進行すると皮膚の潰瘍などを引き起こすことがあります。

むくみで受診すべきケース

  • 長時間座り続けた後に足が急にむくんだ場合(急性肺動脈塞栓症の疑い)
  • むくみに加えて呼吸困難や息切れがある場合(心臓疾患の可能性、特に心筋梗塞や狭心症など)
  • 急な体重増加を伴う場合
  • むくみ以外の目立った症状がない場合でも、重大な疾患の初期症状である可能性があるため

むくみ(浮腫)の診断と検査について

むくみの診断ではまず患者様のお話を詳しく伺い、むくみの状態を視診・触診で確認します。

原因疾患を特定するために以下のような検査を行います。

  • 心臓関連検査: 命に関わる心不全の有無を確認するために、心エコー、心電図、胸部レントゲン検査などを行います。
  • 血液検査: 心不全の重症度を示すBNP、肝機能、腎機能、貧血、甲状腺機能などを調べます。また、D-ダイマーという項目で血栓ができやすい状態かをチェックします。
  • 画像検査: 必要に応じて、造影CT検査や下肢血管エコーを実施し、血栓の有無や血管の状態を確認します。特に急性肺動脈塞栓症が疑われる場合は、肺に血栓が到達していないかを詳しく確認します。
  • 尿検査: 塩分の摂取量などを確認し、生活習慣に起因するむくみであるかどうかの判断材料とします。

これらの検査結果を総合的に判断し、むくみの原因となっている疾患を特定し最適な治療方針を決定します。

むくみ(浮腫)の治療法について

むくみの治療はその原因に応じて、塩分・水分の摂取制限、薬物療法、運動療法などを適切に組み合わせて行います。

  • 水分と塩分の摂取制限: むくみの原因が生活習慣にある場合、水分と塩分の摂取量を適切にコントロールすることで、むくみの改善に繋がります。一般的には、水分は1日1.5〜2.0リットル、塩分は1日6グラムが目安とされています。無理なく継続できるよう、ご自宅での血圧や体重の測定・記録もサポートします。
  • 薬物療法: 過剰な水分を排出する利尿剤や、心臓の負担を軽減する薬剤など、患者様の病状に応じた薬を処方します。利尿剤はむくみの改善に非常に有効ですが、腎機能低下や脱水症状のリスクもあるため、複数の部位にむくみがあり日常生活に影響が出ている場合や、むくみが原因で病気が進行している場合に慎重に使用します。
  • 運動療法: 血流の改善やリンパの流れを促進する運動は、むくみの軽減に役立ちます。個々の状態に合わせた運動内容を提案します。

むくみ(浮腫)の予防について

むくみを予防するためには日々の生活習慣を見直すことが重要です。

  • 塩分・水分の適切な摂取: 過剰な塩分や水分はむくみの原因となります。バランスの取れた食事を心がけ、水分の摂りすぎにも注意しましょう。
  • 適度な運動: 特にデスクワークなどで長時間座りっぱなしになる場合は、定期的に体を動かしたり、ふくらはぎを意識的に動かすなどして、血流の滞りを防ぎましょう。
  • 体を冷やさない: 体が冷えると血行が悪くなり、むくみやすくなります。温かい服装や入浴などで体を温めることを心がけましょう。
  • 定期的な健康チェック: 特に持病をお持ちの方や、むくみが気になる方は、定期的に医療機関を受診し、体の状態をチェックすることが大切です。早期発見・早期治療が、重症化を防ぐ鍵となります。

よくある質問

むくみと体重増加は、どんな関係がありますか?

急激な体重増加は、身体に余分な水分が溜まっている「むくみ」が原因である可能性が高いです。特に短期間で体重が増えた場合は、むくみが重症化しているサインかもしれません。

健康のために水をたくさん飲んでいますが、むくみます。これはなぜですか?

健康のために水分摂取は大切ですが、むくみが生じる場合は、摂取量が適量を超えている可能性があります。体質や体調によっては、水分の過剰摂取がむくみに繋がることがあります。一度、適切な水分摂取量についてご相談ください。

足のむくみがひどいのですが、どの科を受診すればよいですか?

むくみは様々な原因で起こるため、まずは内科を受診されることをお勧めします。特に、急なむくみや、息切れ・胸痛などを伴う場合は、心臓や腎臓、肝臓などの疾患が隠れている可能性があるため、早めに循環器内科でのご相談をお勧めします。当院では内科全般に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

むくみを放置するとどうなりますか?

むくみを放置すると、不快な症状が続くだけでなく、その原因となっている病気が進行する可能性があります。特に心臓や腎臓の疾患が原因の場合、命に関わることもあるため、むくみが気になる場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

むくみは自分で改善できますか?

塩分や水分の摂取量を適切にすること、適度な運動を心がけること、長時間同じ姿勢でいないことなど、生活習慣を見直すことで改善する場合もあります。しかし、病気が原因のむくみであれば、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。