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Symptoms / Diseases

間質性肺炎(特発性間質性肺炎)について

間質性肺炎とは肺の中の「間質(かんしつ)」と呼ばれる部分に炎症や損傷が起こる病気の総称です。一般的な肺炎とは異なり、肺胞と毛細血管の間の壁(肺胞壁)が線維化して厚く硬くなることで肺活量が低下し、酸素の取り込みが難しくなります。これにより咳や息苦しさが引き起こされます。

間質性肺炎の分類

間質性肺炎はその原因や症状によって分類されます。

  • 原因が判明している間質性肺炎
    • 膠原病肺: 関節リウマチなどの膠原病が原因で引き起こされるもの
    • 塵肺(じんぱい): 粉塵の吸入によるもの
    • 過敏性肺炎: 特定のアレルゲンに対する過敏反応によるもの
    • 薬剤性肺障害: 薬やサプリメントが原因で引き起こされるもの
  • 原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎:IIPs)
    • 原因が特定できないものを指し国の難病指定を受けています
    • 特発性肺線維症(IPF): 緩やかな進行が特徴の慢性間質性肺炎で発症数の多くを占めるもの
      他の病型とは治療法が異なり、予後が悪化する場合があります。50歳以上の男性に多く、喫煙は症状を悪化させる危険因子とされています。

間質性肺炎(特発性間質性肺炎)の症状について

間質性肺炎の主な症状は「咳(咳嗽:がいそう)」と「息切れ(呼吸困難)」です。

  • 咳: 痰を伴わない乾性咳嗽が季節や時間帯を問わず続きます。
  • 息切れ: 初期は階段や坂道で息が切れる程度ですが、進行すると室内の移動や着替えなどの軽い動作でも息切れを感じるようになります。
  • チアノーゼ: 血液中の酸素不足により皮膚が青く変色することがあります。
  • 急性増悪(きゅうせいぞうあく): 稀に数日~数週間で急速に病状が悪化することもあります。
  • 自覚症状: 多くの場合、進行がゆっくりで、発症初期に自覚症状がないことが多いです。健康診断の胸部レントゲン検査やCT検査で異常が見つかるケースも多くあります。

間質性肺炎(特発性間質性肺炎)の診断と検査について

診断のために以下の検査が行われます。

  • 診察・問診: 症状、発症時期、持病、内服薬、健康食品、仕事や住環境などについて詳しく伺います。
  • 聴診: 聴診器で胸から「捻髪音(ねんぱつおん)」または「ベルクロラ音」と呼ばれる「パチパチ」「パリパリ」といった特徴的な音が聞こえることがあります。
  • ばち指: 指先が太鼓の「ばち」のように丸く膨らむ症状が見られる場合があります。
  • 胸部画像検査(レントゲン検査、CT検査):
    • 初期: 「すりガラス様陰影」と呼ばれる、肺が白っぽく映る特徴が見られます。
    • 進行: 「蜂巣肺(ほうそうはい)」と呼ばれる、肺が硬く縮み蜂の巣のように見える特徴がCT画像で判別できるようになります。これにより病型や重症度を判定します。
  • 呼吸機能検査: 肺の膨らみ方や酸素を吸収する力を測定し、重症度を判定します。
  • 血液検査: 炎症の強さや肺組織の状態を確認します。「SP-A」「SP-D」「KL-6」などの項目を検査し、間質性肺炎の勢いや治療効果を判定します。
  • 気管支鏡検査(※必要な場合): 気管支に内視鏡を挿入し、肺の炎症に関わる細胞の種類や線維化の程度を調べます。
    • 気管支肺胞洗浄(BAL): 生理食塩水で肺の一部を洗浄し、液中の細胞を検査します。
    • 経気管支肺生検(TBLB): 肺の一部を数ミリ採取し、検査します。
  • 外科的肺生検(※必要な場合): 気管支鏡検査で正確な病型診断ができない場合や、難病認定のために確定診断が必要な場合に、手術で肺の一部を採取し、詳細な病理診断を行います。

間質性肺炎(特発性間質性肺炎)の治療法について

主な治療法は以下の通りです。

  • 薬物療法:
    • 原因が明らかな間質性肺炎: 原因物質(薬剤やアレルゲンなど)を避けることで症状が改善することがあります。炎症を抑えるために「副腎皮質ステロイド」や免疫抑制剤が用いられることもあります。
    • 原因の特定できない特発性間質性肺炎(IIPs):
      • 特発性肺線維症(IPF): ステロイド薬は効果がなく、「ピルフェニドン(ピレスパ®)」や「ニンテダニブ(オフェブ®)」といった抗線維化薬が第一選択となります。これらの薬は病気の進行を抑制するもので、治癒させるものではありません。高額で副作用も多いため、症状が落ち着いている場合は経過観察となることもあります。
      • IPF以外の特発性間質性肺炎: 病型に応じてステロイドや免疫抑制剤などの抗炎症剤、または抗線維化剤を使用します。
    • 共通: つらい咳症状に対して鎮咳薬(咳止め)が処方されることがあります。
  • 在宅酸素療法: 血液中の酸素不足により呼吸不全になり、日常生活に支障が出る場合に、酸素濃縮器などを自宅に設置し、酸素を吸入して息苦しさを緩和します。
  • その他: 若年で他の治療効果がなく、厳しい基準を満たす場合には肺移植が検討されることがあります。

間質性肺炎(特発性間質性肺炎)の予防について

間質性肺炎は少しの体調不良で急に病状が悪化し命に関わる可能性があるため、日常生活でも以下の点に注意しましょう。

  • 禁煙: 喫煙は間質性肺炎を進行させ、肺がん合併のリスクも高めます。受動喫煙も同様にリスクがあるため、ご家族や周囲の方も禁煙することが望ましいです。
  • 感染予防: マスク、手洗い、アルコール消毒を徹底し、バランスの取れた食事と十分な睡眠で体調管理を心がけましょう。人混みを避け、部屋の加湿も有効です。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種も推奨されます。
  • 適正体重を保つ: 体重の増減は病気の進行に影響します。太りすぎは呼吸困難を悪化させる可能性があり、痩せすぎは経過を悪くするため、適正体重を維持することが重要です。

よくある質問

間質性肺炎になったら必ず治療が必要ですか?

多様な病型があり、急速に進行するものから、特別な治療なしに何年も進行しないものまであります。治療薬は高価で副作用もあるため、症状が軽い場合は経過観察となることもあります。治療方針は、進行度、年齢、体力、他の臓器の状態などを総合的に考慮して判断されます。

特発性間質性肺炎は難病に指定されているので公費での治療が認められますか?

特発性間質性肺炎(IIPs)は国の指定難病です。検査結果が定められた基準を満たし、申請して認定されれば、公費での医療費補助を受けることができます。ただし、重症度やかかった医療費によっては認定を受けられない場合もあります。詳細は地域の保健所にお問い合わせください。

間質性肺炎はどのような経過をとりますか?

病型によって経過は異なります。ステロイド薬が効果的なものや、ほとんど進行しないものもあります。特発性肺線維症(IPF)は慢性進行型で、少しずつ線維化が進みます。生存期間の平均は報告されていますが、患者さんによって経過は異なります。