症状・疾患について

Symptoms / Diseases

肺炎について

肺炎は口や鼻から侵入した細菌が気道を通り、肺の内部で炎症を起こす状態です。肺は呼吸に不可欠な臓器であり炎症が軽度であれば咳、痰、発熱といった症状で済みますが重症化すると呼吸困難(息苦しさ)、全身倦怠感、胸痛を引き起こし、さらには意識障害に至ることもあり命に関わる病気です。近年、日本人の死因では癌、心疾患に次いで第3位となっており特に高齢者にとっては非常に危険な病気であると認識することが重要です。

一方、気管支炎は炎症が肺まで達せず気管支にとどまる状態を指します。一般的に「風邪」と呼ばれる状態は気管支炎であることが多いですが、症状だけで気管支炎と肺炎を区別するのは非常に困難で危険です。インターネット上では「咳が激しいか」「痰の色がついているか」「熱があるか」といった情報で判断できるとされていますが、これらはあくまで参考程度であり確定的な判断にはなりません。

肺炎の症状について

肺炎を疑う主な症状は咳です。咳は気管支や肺に異物が入った際の警告サインであり、特に急に出始めた咳や悪化している場合は肺炎の可能性が高まります。咳がなくても痰が絡む、熱があるといった症状があれば積極的に肺炎を疑って検査を進めます。

肺炎の診断と検査について

肺炎か気管支炎かを鑑別するにはレントゲンなどの画像診断が重要です。気管支炎ではレントゲンに異常が見られることはほとんどありませんが、肺炎であれば白い影として確認できます。ただし、レントゲンで異常が認められない肺炎や、気管支炎が悪化して肺炎に移行するケースもあるため、初回のレントゲンだけで安心するのは危険です。

当院の肺炎の診断について、肺炎を疑う主な症状は咳です。咳は気管支や肺に異物が入った際の警告サインであり、特に急に出始めた咳や悪化している場合は肺炎の可能性が高まります。咳がなくても、痰が絡む、熱があるといった症状があれば、積極的に肺炎を疑って検査を進めます。

肺炎の検査について

  • 胸部レントゲン検査: 肺炎の診断において最初に行う検査で、肺の炎症を白い影として確認します。症状が軽くても肺炎が隠れている場合があるため、積極的に撮影を推奨しています。
  • 放射線被ばくについて: 胸部レントゲン1枚あたりの被ばく量は0.05~0.1mSv程度で、これは日本からアメリカへの飛行機移動時の宇宙線被ばく量と同程度であり、人体への影響はほとんどありません。
  • 妊娠中の方へ: 妊娠中の方には、胎児を放射線から保護するための防護エプロンを用意しています。肺炎を放置することによる胎児への影響も考慮し、検査への協力をお願いしています。

当院で胸部レントゲンで肺炎と診断された場合、以下の2点が重要となります。

  1. 重症度がどれくらいか?
  2. 何の菌が原因か?

これらを誤ると治療が効果的でなかったり、肺炎が悪化したりする可能性があります。

肺炎の重症度

日本の肺炎ガイドラインでは、A-DROPというスコアを用いて重症度を判断します。

  • A (Age):男性70歳以上、女性75歳以上
  • D (Dehydration):BUN 21mg/dl以上または脱水あり
  • R (Respiration):SpO2 90%以下(PaO2 60torr以下)
  • O (Orientation):意識障害あり
  • P (Pressure):血圧(収縮期)90mmHg以下

A-DROPの各項目説明:

  • 年齢: 高齢になるほど免疫力が低下し、重症化リスクが高まります。
  • 脱水: 食事や水分摂取が困難な場合、脱水状態に陥り危険です。当院ではBUNの検査結果が当日出ないため、食事・水分摂取状況で判断します。
  • 酸素状態: 肺の炎症がひどいと酸素を取り込みにくくなり、SpO2モニターで酸素状態を確認します。SpO2が90%以下は酸素投与が必要な危険な状態です。
  • 意識障害: 脱水や低酸素、細菌の全身への広がりにより意識が遠のく状態は、脳を含む全身状態の危険性を示唆し、緊急対応が必要な場合があります。
  • 血圧低下: 高熱による脱水や敗血症によりショック状態となり、血圧が低下することがあります。当院でも血圧測定が可能です。

A-DROPスコアが0点であれば外来治療が可能と判断されることが一般的です。1~2点の場合は中等症と診断し、その他の状態と合わせて入院か外来かを判断します。3点以上は重症とされ、入院が基本となります。特に意識障害や血圧低下がある場合は、1項目でも重症と判断し入院を検討します。

また、A-DROPスコアだけでなく、白血球やCRPといった炎症反応を採血で測定し、重症度を判断します。これらの数値が高い場合は、現時点のA-DROPスコアが低くても急激に悪化する可能性や、他の感染症の合併も考慮する必要があるため、場合によっては入院できる病院へ紹介する場合があります。

肺炎の原因菌精査

感染症治療の基本は、原因菌の特定です。効果のない抗菌薬を投与すると、治療が遅れるだけでなく、肺炎の悪化を招く可能性があります。

  • 喀痰検査: 痰が出る方には、痰を培養して直接原因菌を特定する検査を行います。結果が出るまでに数日かかりますが、どのような菌が原因かを特定するために重要です。
  • 尿抗原検査: 肺炎球菌とレジオネラ菌は、肺炎の原因菌として特に注意が必要です。これらは尿中に排出される抗原を調べることで、約20分で検出可能です。陽性率・陰性率も高く、総合病院の呼吸器内科でも積極的に行われる検査であり、当院でも準備しています。
    1. 肺炎球菌: 肺炎原因菌の中で最も可能性が高い(25%)菌です。近年は抗菌薬が効かない耐性菌も問題となっており、肺炎球菌と診断された場合は抗菌薬を強化する必要があります。
    2. レジオネラ菌: 自然環境中に生息し、特に循環式の浴槽水などで繁殖することが知られています。非常に毒性が強く、感染すると急激に呼吸状態が悪化し、肺だけでなく全身に症状が及ぶことがあります。一般的な抗菌薬が効かず、特定の抗菌薬しか効果がないため、適切な治療を怠ると致死率が70%に上ると言われる危険な菌です。
  • 非定型性肺炎の鑑別: レントゲンで異常を呈さない可能性のある肺炎(マイコプラズマ、クラミジア、百日咳など)を非定型性肺炎と呼びます。以下の項目が4つ以上当てはまる場合に疑います。
    1. 年齢60歳未満
    2. 基礎疾患がない、あるいは軽微
    3. 頑固な咳がある
    4. 胸部聴診上所見が乏しい
    5. 痰がない、あるいは迅速診断法で原因菌が証明されない
    6. 末梢血白血球数が10,000/μL未満である

特に⑥の白血球数は、一般的な細菌性肺炎で上昇するのに対し、非定型性肺炎では上昇しないことが多いため、原因菌の推定に役立ちます。疑わしい場合は、採血でマイコプラズマ抗体や百日咳抗体を測定することも可能です。百日咳は鼻の粘膜を綿棒でこする抗原検査もできます。

当院では、胸部レントゲンで肺炎と診断された方には、採血(炎症反応、マイコプラズマや百日咳抗体の確認)、採尿(レジオネラ・肺炎球菌)、喀痰検査(痰が出る方のみ)、百日咳抗原検査をご案内しており、総合病院の初期対応と同レベルの検査を提供可能です。

唯一、総合病院でしかできない検査として胸部CT検査がありますが、全ての患者さんに必要とは考えていません。高齢者で誤嚥性肺炎が疑われる方、重症肺炎の方、他の疾患合併が疑われる方など、CTが必須で入院加療が必要な可能性のある方には、当院から東川口病院、川口医療センターなどの総合病院へご紹介させていただきます。

肺炎の治療法について

当院では、ガイドラインに沿って肺炎の治療を行います。

内服薬治療

  • 細菌性肺炎: オーグメンチンSR(375㎎、1日3回、計1125㎎)やユナシン(375㎎、1日3回、計1125㎎)といったペニシリン系抗菌薬を使用します。重症度によっては、ビクシリンカプセル(250㎎、毎食後3カプセル、計750㎎)を追加することで、ペニシリンの効果を高めます。
  • 非定型肺炎: 胸部レントゲンで異常が見られない場合など、非定型肺炎が疑われる場合は、ジスロマックSR(2ℊ、1日1回)やクラリス(200mg、朝夕食後、1日2回)といったマクロライド系抗菌薬を追加することが多いです。

当院では、どの菌をターゲットにするか、肺炎の重症度はどうかを考慮し、柔軟に内服薬を処方します。

点滴治療

高熱を伴う中等度以上の肺炎が疑われる場合、気管支喘息発作を併発している場合、内服薬で効果が見られない場合など、点滴治療が必要となることがあります。当院では、以下の2種類の点滴を用意しています。

  • 細菌性肺炎が疑われる方: セフトリアキソン
  • 非定型肺炎が疑われる方: クラビット

これらは1日1回の点滴で24時間効果を維持でき、入院加療でも推奨されている治療薬です。酸素投与など入院が必須の状態でなければ、肺炎の初期治療は当院でも可能です。ご家庭の事情で入院が難しい方には、命に関わる場合を除き、連日当院での点滴治療も可能です。

治療後の再診について

肺炎の初期治療後、多くの場合、再度の受診を促しています。これは、胸部レントゲン写真で肺炎像が改善したかどうかを確認するためです。症状だけで判断すると、肺炎が完治していなかったり、感染症以外の「器質化肺炎」に移行していたりする可能性があるためです。症状が改善しない場合は、抗菌薬が効かなかった可能性や、咳喘息など他の疾患に移行している可能性を考慮し、適切に加療を行います。

胸部CT検査を含む総合的な判断が必要な場合や、入院での加療が望ましいと判断された場合は、速やかに総合病院(当院から東川口病院、川口医療センターなどへご紹介させていただきます。当院で検査したレントゲン写真などの結果は診療情報提供書として送付し、他院でのスムーズな引き継ぎをサポートいたします。

当院は、原因菌の推定と効果的な抗菌薬の選択を考慮し、肺炎が完治するまでしっかりと診療いたします。

肺炎の予防について

(現時点では情報がないため、一般的な肺炎予防策を記載します)

肺炎の予防には、日常生活での以下の点に注意することが重要です。

  • 手洗い・うがい: 感染症予防の基本です。外出からの帰宅時や食事前など、こまめに行いましょう。
  • マスクの着用: 流行期や人混みではマスクを着用し、飛沫感染を防ぎましょう。
  • 規則正しい生活: 十分な睡眠とバランスの取れた食事で免疫力を高めましょう。
  • 禁煙: 喫煙は気道の防御機能を低下させ、肺炎のリスクを高めます。
  • ワクチン接種: 肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは、肺炎の発症や重症化を防ぐ効果が期待できます。特に高齢者や基礎疾患をお持ちの方は、かかりつけ医にご相談ください。

よくある質問

肺炎はどのような症状が出ますか?

肺炎の主な症状は、咳、痰、発熱です。重症化すると、息苦しさ、全身倦怠感、胸の痛み、意識障害などが現れることもあります。

風邪と肺炎の見分け方はありますか?

症状だけで風邪と肺炎を区別するのは非常に困難です。「咳が激しいか」「痰の色がついているか」「熱があるか」といった情報はあくまで参考程度であり、確定的な判断にはなりません。正確な診断にはレントゲン検査が必要です。

肺炎の検査はどのようなものがありますか?

当院では、胸部レントゲン検査を中心に、採血(炎症反応、マイコプラズマや百日咳抗体の確認)、採尿(レジオネラ・肺炎球菌)、喀痰検査(痰が出る方のみ)、百日咳抗原検査などを行っています。

肺炎と診断されたら必ず入院が必要ですか?

肺炎の重症度によって、入院の必要性は異なります。日本のガイドラインではA-DROPスコアを用いて重症度を判断し、スコアが低い場合は外来での治療が可能です。ただし、重症度が高い場合や、基礎疾患がある場合などは入院をお勧めすることがあります。

肺炎の治療期間はどのくらいですか?

肺炎の種類や重症度、使用する抗菌薬によって異なりますが、一般的には数日から数週間を要します。症状が改善しても、レントゲン写真で肺炎像が完全に消退するまで治療を続けることが重要です。

肺炎は再発しますか?

肺炎は、一度治っても、免疫力が低下したり、新たな感染を受けたりすることで再発する可能性があります。日頃から予防を心がけることが大切です。