症状・疾患について

Symptoms / Diseases

高血圧症について

高血圧症とは血圧が常に高い状態を指します。具体的には、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上が持続する場合に診断されます(家庭での血圧は収縮期135mmHg以上または拡張期85mmHg以上)。運動後、寒い場所、ストレス、飲酒後など、一時的に血圧が上昇することはありますが、これらは高血圧症とは異なります。常に高い状態が続いて初めて高血圧症と診断されます。

高血圧症は国民病とも言われ、3500万人から4000万人、予備軍を含めると5000万人を超えると言われています。年齢が上がるほどリスクが高まり、60歳以上では60%以上、70代以上では70%以上が高血圧症と診断されます。

高血圧の原因には生活習慣が原因となる「本態性高血圧症」と、体の病気が原因となる「二次性高血圧症」があります。本態性高血圧症の主な原因は、塩分の過剰摂取、運動不足、喫煙、多量の飲酒、肥満、加齢、遺伝などが挙げられます。二次性高血圧症は、睡眠時無呼吸症候群、ホルモン異常、心疾患、腎臓病などが原因で起こることがあります。

高血圧症の症状について

高血圧症の多くは自覚症状がほとんどありません。しかし、急激に血圧が上がると「高血圧緊急症」と呼ばれる状態となり、頭痛、動悸、吐き気、めまいなどの症状が現れることがあります。

症状がないために放置してしまう方も少なくありませんが、高血圧症を放置すると血管に高い圧がかかり続け、血管が傷つき硬くなる「動脈硬化」を引き起こします。動脈硬化は一度進行すると元に戻すことができません。

動脈硬化が引き起こす可能性のある病気には、以下のようなものがあります。

  • 心臓の病気:狭心症、心筋梗塞、心不全
  • 脳の病気:脳出血、脳梗塞
  • 腎臓の病気:慢性腎不全

特に心筋梗塞、脳出血、脳梗塞は突然発症し、突然死のリスクもあります。また、突然死に至らなくても、重い後遺症を引き起こす可能性があります。

高血圧症の診断と検査について

当院では、高血圧症で受診される患者様に対し、診察前に待合室で上腕タイプの自動血圧計で血圧を測定し、スムーズな診療を心がけています。健康診断で一度だけ血圧が高いと指摘された方には、一時的な上昇(白衣高血圧症)の可能性も考慮し、再度院内で測定します。

ご自宅での血圧測定も非常に重要です。血圧計の購入をお願いしており、当院では血圧手帳を無料でお渡ししています。毎日測定することで、血圧の状況を確認し、治療効果の判断に役立てます。

大切なのは「血圧の数字を下げる」ことだけでなく、「血圧が高い原因は何か」「動脈硬化が他に起こる要因はあるか?すでに合併症はあるか?」を確認することです。

高血圧症の検査は、以下の項目を中心に実施します。

  • 心臓の検査:高血圧症で最も負担がかかるのが心臓です。心不全や不整脈が原因で血圧が上がっている可能性もあるため、胸部レントゲン写真(心臓の大きさ)や心電図(心臓の動き)で心臓の状態を確認します。
  • 合併症の確認:高血圧症を含む生活習慣病は、複数疾患を合併している方も多いため、脂質異常症や糖尿病の有無、肝臓や腎臓の機能、NTProBNP(心不全のマーカー)などを採血で調べます。心不全が疑われる場合は心エコー検査も行います。
  • 二次性高血圧症の原因検索:本態性高血圧症の他に、体の病気が原因で血圧が上がる二次性高血圧症の可能性も考慮し、甲状腺の採血を積極的に行っています。
  • 睡眠時無呼吸症候群の検査:いびきや無呼吸、日中の眠気、倦怠感などの症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。この病気は寝ている間に呼吸が止まることで体中の酸素が不足し、心臓が頑張って動くことで血圧が上がるため、高血圧の原因となることがあります。当院では簡易検査で自宅で一晩つけるだけで確認できるため、簡便に検査が可能です。

患者様のご希望に応じて柔軟に対応しますが、採血、レントゲン、心電図を半年以内に受けていない方には検査をお勧めしています。

高血圧症の治療法について

高血圧症の治療は、血圧の高さだけでなく、危険因子の数によって決定されます。高血圧の治療は動脈硬化を防ぐために行われるため、動脈硬化を進行させる他の疾患の合併や、動脈硬化が進行すると危険になる疾患の有無が重要になります。

治療開始の指標

高リスクの患者様は薬物治療を開始します。血圧が180/110mmHg以上の方や、血圧が140/90mmHg程度でも重度なリスクがある方は即時治療が必要です。低リスクの場合は3ヶ月、中リスクの場合は1ヶ月の生活習慣改善で血圧が140/90mmHg以下になるか様子を見ます。

治療薬

当院ではガイドラインに基づき、患者様の血圧状況、合併症、年齢、生活スタイルなどを考慮して最適な薬を選択します。単剤で効果が不十分な場合は合剤も検討し、なるべく少ない錠数でコントロールできるよう努めます。飲み薬が苦手な方には貼り薬も準備しており、血圧が不安定な方にも柔軟に対応できます。高血圧症の治療は継続が重要であり、当院では週6日診療を行うことで、患者様が治療を継続しやすい環境を整えています。

高血圧症の予防について

高血圧症の多くは生活習慣が原因で起こる本態性高血圧症です。そのため、生活習慣の改善が非常に重要です。

  • 減塩:塩分6g未満が推奨されますが、平均的な日本人の塩分摂取量は10~12gと目標値の倍以上です。意識的に減塩を心がけましょう。
  • 節酒:厚生労働省が推奨する純アルコール量は1日20g程度(ビール500ml缶1本、日本酒1合、酎ハイ350ml缶1本程度)です。これを超えると高血圧症のリスクが上がります。
  • 食習慣の改善:塩分だけでなく、カロリー摂取量にも注意が必要です。野菜や果物をバランス良く摂取し、肥満にならないよう心がけましょう。
  • 減量:BMI25未満が目標です。BMIは「体重(kg)/身長(m)の2乗」で計算できます。
  • 禁煙:タバコは血管にダメージを与え、動脈硬化の原因となります。高血圧症よりも癌、心疾患、脳疾患の発症リスクが優位に高いデータもあります。当院では禁煙外来も設けています。
  • 有酸素運動の習慣:ジョギング、長距離走、水泳、自転車など、長時間比較的弱い力を加え続ける有酸素運動が効果的です。1回30分程度、軽く汗ばむ程度の運動を毎日、または最低週に2~3回続けることを目指しましょう。無酸素運動(ウェイトトレーニング、短距離走など)は筋力アップには適していますが、高血圧症の改善にはつながりにくいので注意が必要です。

当院では、これらの生活習慣改善に関するパンフレットを無料でお渡ししています。

よくある質問

高血圧症は自覚症状がないと聞きましたが、本当ですか?

はい、高血圧症の多くは自覚症状がほとんどありません。そのため「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれ、気づかないうちに病気が進行してしまうことがあります。しかし、急激に血圧が上昇した場合には、頭痛や動悸、めまいなどの症状が現れることもあります。

家庭で測る血圧と、病院で測る血圧が違うのですが、どちらを信じればよいですか?

病院で測る血圧(診察室血圧)と家庭で測る血圧(家庭血圧)では、診断基準値が異なります。当院では、健康診断で血圧が高いと指摘された方には、一時的な上昇(白衣高血圧症)の可能性も考慮し、再度院内で測定します。また、ご自宅での血圧測定も非常に重要視しており、血圧手帳を活用して毎日の血圧の状況を確認しています。

高血圧症の治療は、一度始めたら一生続けなければいけませんか?

高血圧症の治療は、動脈硬化の進行を防ぎ、将来的な合併症のリスクを減らすために継続が重要です。ただし、生活習慣の改善によって薬の量を減らしたり、中止できる場合もあります。医師と相談しながら、ご自身の状態に合わせた治療を継続していくことが大切です。

高血圧症と診断されましたが、薬に頼りたくありません。生活習慣の改善だけで様子を見てもいいですか?

高血圧症の治療において生活習慣の改善は非常に重要です。しかし、血圧の高さやその他の危険因子の数によっては、早期に薬物治療を開始した方が良い場合もあります。特に、血圧が非常に高い場合や、糖尿病などの合併症がある場合は、速やかに治療を開始することが推奨されます。まずは一度当院にご相談いただき、適切な治療方針を一緒に検討しましょう。

睡眠時無呼吸症候群も高血圧の原因になると聞きましたが、検査はできますか?

はい、睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まることで体中の酸素が不足し、血圧が上昇する原因となることがあります。当院では、ご自宅で一晩装着するだけで簡便に検査ができる簡易検査を実施しております。いびきや日中の眠気などの症状がある方は、お気軽にご相談ください。