症状・疾患について

Symptoms / Diseases

骨粗鬆症について

骨粗鬆症は骨量(骨全体に含まれるカルシウムなどの量)が低下し、骨がもろくなることで骨折しやすくなる病気です。主に閉経後の女性に多く見られますが、男性や若い女性にも発症することがあります。日本には約1000万人の患者さんがいるとされており、高齢化社会の進展に伴い、その数は年々増加しています。骨粗鬆症は初期段階では痛みなどの自覚症状がほとんどないため、骨密度が低下していても気づかないことが多く、骨折して初めて診断されるケースも少なくありません。

骨粗鬆症の症状について

骨粗鬆症の主な原因は骨吸収(骨を壊す働き)と骨形成(新しい骨を作る働き)のバランスが崩れることによる骨密度の低下です。健康な骨ではこのバランスが保たれていますが、骨粗鬆症の患者さんでは骨吸収が骨形成を上回るため骨がスカスカになり、強度が低下します。これによりわずかな力でも骨折しやすくなります。

骨粗鬆症のリスク要因としては加齢や更年期(閉経前後の5年間)の女性が挙げられます。女性は更年期に入ると卵巣機能が低下し、骨形成を促進するホルモンであるエストロゲンの分泌が減少します。このエストロゲンの欠乏が骨吸収優位のバランスを引き起こし、骨粗鬆症のリスクを高めます。

その他、暴飲暴食、運動不足、喫煙などの生活習慣の乱れも骨粗鬆症のリスクとなりますがこれらの生活習慣を改善することは骨粗鬆症の予防にもつながります。

骨粗鬆症は大きく以下の2種類に分類されます。

  • 原発性骨粗鬆症: 加齢などによって骨密度が低下するタイプで、骨粗鬆症のほとんどがこれに該当します。
  • 続発性骨粗鬆症: 薬剤の長期使用や他の病気の合併症として発症するタイプです。
    • 薬剤性: 長期間にわたるステロイド薬の使用など
    • 内分泌疾患: 糖尿病、甲状腺機能亢進症、性腺機能不全、Cushing症候群など
    • 血液疾患: 多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、白血病など
    • 消化器疾患: クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、胃切除術後、吸収不良症候群など
    • その他: 慢性肝炎、慢性腎臓病、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患など
    • 上記以外にも、さまざまな疾患や薬剤が原因となることがあります。

骨粗鬆症の診断と検査について

骨粗鬆症は骨折の有無と骨密度によって診断されます。

骨折には転んで手をついた、重いものを持ち上げた、尻もちをついたなど、健康な方であれば骨折しないようなわずかな力で起こる「脆弱(ぜいじゃく)性骨折」もあります。

骨密度の測定にはX線(レントゲン検査)を用いた以下の方法があります。

  • 全身DEXA(デキサ)法: 太ももの付け根の骨、腰の骨を測定します。
  • 前腕骨DEXA法: 腕の骨を測定します。
  • DIP法: 手の骨を測定します。
  • 超音波法: かかとの骨を測定します。

当院では現在最も普及している測定法であるDIP法による骨密度の測定を行っています。DIP法は手のX線デジタルデータを解析する方法で、左手を標準物質であるアルミスケールとともに撮影し、第2中手骨の陰影度とアルミスケールを比較して骨密度を測定します。放射線被曝量が少なく安全性が高い検査であり短時間(撮影自体は1分未満)で行え、結果もその場で説明することができます。

骨粗鬆症の診断にはYAM(Young Adult Mean:若年成人平均値)という数値が重要になります。このYAMは、20〜44歳の健康な方の骨密度を100%とした時のご自身の骨密度が何%あるかを比較した数値です。脆弱性骨折がある場合はYAMが80%未満、ない場合にはYAMが70%以下で骨粗鬆症と診断されます。

また、続発性骨粗鬆症の場合には原因となっている疾患の治療が必要となります。そのため血液検査や超音波検査、CTなどの画像検査など、原因となる疾患を探すための検査も行われることがあります。

骨粗鬆症の検査が必要な人

  • 50歳以上の女性は全員、一度は骨粗鬆症の検査が必要と考えられます。
  • 男性は脆弱性骨折、もしくは以下の骨折リスクが1つ以上ある方は検査が必要と考えられます。
    • 喫煙習慣がある
    • 過度な飲酒をしている
    • 運動不足
    • 偏食
    • ステロイド薬を服用している
    • 胃切除術後
    • 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)がある
    • 糖尿病、甲状腺機能亢進症、性腺機能不全、Cushing症候群などの病気がある
    • 多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、白血病などの血液疾患がある
    • 慢性肝炎、慢性腎臓病、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患などの病気がある

骨粗鬆症の治療法について

骨粗鬆症の治療の中心は薬物療法であり、その他に食事・運動療法、生活習慣の改善を並行して行います。

骨粗鬆症の薬物療法は大きく以下の3つのタイプに分かれます。

骨吸収を抑制する薬剤

ビスホスホネート製剤(商品名:ボナロン、ボンビバ、アクトネルなど)は、骨を壊す破骨細胞の働きを抑えることで骨吸収を抑制し、骨密度を増加させます。この薬には飲み薬のほか、注射薬のタイプもあります。

SERM(サーム)と呼ばれる選択的エストロゲン受容体調整薬(商品名:塩酸ラロキシフェン、バゼドキシフェン酢酸塩)は、女性ホルモンのエストロゲンと似た作用を持っており、特に閉経を迎えた50〜60歳代の女性の治療に用いられることが多い薬です。

また、デノスマブ(商品名:プラリア)は、破骨細胞の働きを直接的に抑えて骨吸収を防ぐ比較的新しい薬剤です。半年に1回の頻度で医療機関にて皮下注射で投与する薬で、重症の患者さまに用いられます。

骨形成を促進する薬剤

ビタミンK2製剤(商品名:グラケーカプセルなど)は骨の形成を促し骨の吸収を抑える働きがあり、痛みを和らげる効果も期待できます。

古くから用いられている活性型ビタミンD3製剤(商品名:エディロール、アルファロール、カルシトリオールなど)は、小腸からのカルシウム吸収を助ける薬です。

複数の骨折があったり骨密度が極めて低い場合には、副甲状腺ホルモン(商品名:フォルテオ、テリボン)が用いられます。この薬には1日1回ご自身で注射するタイプ(フォルテオ)と、週に1回医療機関で注射するタイプ(テリボン)があります。

骨形成促進と骨吸収抑制する薬剤

ロモソズマブ(商品名:イベニティ)は骨の形成を促進すると同時に骨の吸収を抑えるという二重の作用を持つ新しいタイプの薬剤で、短期間で骨密度を大幅に上昇させる効果が期待できます。治療は1か月に1回、医療機関での皮下注射となり、原則として12か月間(最大12回)で一区切りとなりますので、その後は他の骨粗鬆症治療薬へ切り替えて治療を継続する必要があります。

薬物療法と並行して、ウォーキングやジョギング、スイミングなど適度な運動を心がけることが大切です。また、タバコや多量飲酒は骨粗鬆症のリスクを高めるため、控える必要があります。

食事については、カルシウムやビタミンDなどを積極的に摂取することが重要です。カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品の他、豆腐、魚類などに多く含まれています。ビタミンDは日光を浴びることでも合成されますが、魚類やきのこ類に多く含まれていますので積極的に摂取するようにしましょう。また、塩分の過剰摂取は骨粗鬆症のリスクを高めるため、控える必要があります。

骨粗鬆症の予防について

骨粗鬆症の予防には、若年期からの骨量増加と、成人期以降の骨量減少をいかに抑えるかが重要になります。

  • 十分なカルシウムとビタミンDの摂取:
    • カルシウム: 牛乳、乳製品、小魚、豆腐、緑黄色野菜などに多く含まれています。
    • ビタミンD: 魚類(鮭、マグロなど)、きのこ類(干し椎茸など)に多く含まれます。また、日光浴によっても体内で生成されます。
  • 適度な運動:
    • ウォーキング、ジョギング、軽い筋力トレーニングなど、骨に負荷がかかる運動が骨形成を促します。
  • 生活習慣の改善:
    • 禁煙、過度な飲酒を控える。
    • バランスの取れた食事を心がける。
  • 定期的な骨密度検査:
    • 特に閉経後の女性は、症状がなくても定期的に骨密度検査を受けることをお勧めします。早期発見・早期治療が、骨折のリスクを低減するために非常に重要です。

よくある質問

骨粗鬆症は女性特有の病気ですか?

いいえ、骨粗鬆症は女性に多いですが、男性にも発症します。特に高齢の男性や、ステロイド薬の長期使用など、特定の原因がある場合に起こりやすくなります。

骨粗鬆症は痛みを伴いますか?

初期段階ではほとんど痛みなどの自覚症状がありません。骨密度が低下して骨がもろくなっても、すぐに痛みを感じるわけではありません。しかし、骨折してしまうと、その部位に強い痛みが生じます。特に背骨の圧迫骨折では、背中や腰の痛みが続くことがあります。

骨粗鬆症の薬はずっと飲み続けなければなりませんか?

骨粗鬆症の薬物療法は、骨密度を改善し、骨折のリスクを低減することを目的としています。治療期間は患者さんの状態や使用する薬剤によって異なりますが、多くの場合、長期的な服用や投与が必要となります。医師とよく相談し、指示に従って治療を継続することが重要です。

骨粗鬆症の治療中に、食事で特に気を付けることはありますか?

はい、カルシウムとビタミンDの摂取は非常に重要です。カルシウムは骨の材料となり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。また、塩分の摂りすぎはカルシウムの排出を促すため、控えめにしましょう。当院では管理栄養士による栄養相談も行っておりますので、お気軽にご活用ください。

骨粗鬆症でも運動はできますか?

はい、適度な運動は骨を強くするために非常に効果的です。ただし、骨がもろくなっている場合は、転倒による骨折のリスクも高まります。ウォーキングなどの軽い運動から始め、医師や理学療法士と相談しながら、ご自身の状態に合わせた運動を取り入れるようにしましょう。転倒を予防するための運動も重要です。